残念(?)王子と毒舌姫の日常

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 私、ハイボールぅ~と張り切って注文を始め、元気を取り戻した友人達を見て千花は安堵の溜息をつく。ぼんやりと三人の楽しそうな会話を聞いていると、ピロリン、とLINE通知の音が千花の耳に入る。それに反応してスマホを開けば、送り主は先程まで残念王子と揶揄われていた直哉だった。中身を確認しようとアプリ画面をタップすれば、海上に作られた魚の養殖場だろうか?そのど真ん中に立つ、少し日に焼けた直哉の姿と、大きな手に抱えられたこれまた大きな魚。次いで、「今回のお土産は鯛!」とメッセージが送られてきた。  今回の出張は九州と遠方かつ半月と珍しく長かった。写真に写された変わらない恋人の姿に、千花のピンクの頬が柔らかく緩む。 「あーー!千花、今絶対先輩の事考えてる!」 「くそぅ!かわいいなぁ!千花たんは!」 「残念王子にはもったいなーーーい!」   ぐりぐりと頭を撫でられるが、いつもの毒舌は鳴りを潜め、千花は友人達にされるがままになっていた。   千花は気がついていた。今日の飲み会は直哉の長期出張を知った友人達が声をかけて集まった事を。つまり、一人寂しく過ごしているであろう千花を元気付けるためだということを。 「……もう。……莉乃、有希、奈緒子……あり、がと」  聞こえるか聞こえないかの声で千花は呟く。騒がしい居酒屋の中でも、莉乃、有希、奈緒子、と名前をそれぞれ呼ばれた友人達は、ニンマリと笑って「お安い御用」と揃って千花に返事をした。 「明日も仕事とか憂鬱だわ」 「ほんと、そろそろ解散しないと辛いよね」 「千花、お会計頼んでー」 「ん、割り勘だかんね」 「え!?千花の為に集まったのにー!」 「それとこれは、べーーつーー」     
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