残念(?)王子と毒舌姫の日常

6/8
1161人が本棚に入れています
本棚に追加
/86ページ
  六年間で覚えてしまった番号を目で追い、通話ボタンをタップすれば相手は待ってましたとばかりに、ワンコールで電話に出た。 『千花ちゃん?』 「うん。直哉君、今電話平気?」 『うん。起きて待ってた。飲み会だったんでしょう?』 「そう。でも、明日朝一の会議があるから飲んでないよ」   ソフトドリンクでお腹タプタプだよ、と言葉を続けると、電話越しに直哉がほっと息をつくのが分かる。 『千花ちゃんはすぐ酔っ払うんだから。飲むのは俺がそっちにいるときだけだからね』 「でた!過保護~!」  ケラケラと笑いながらそう言ってくる直哉を揶揄うと、今度は大きな溜息が聞こえてくる。 「何よー」 『別に。あ、十四日早く帰れそう。十五時には家に着くかな』 「ホント?あ、じゃぁ、さっきのお土産の鯛、カルパッチョ用とソテー用に捌いといて」 『ん。それくらないなら』  そう返事を返しつつ、電話の向こうで直哉があくびをする音が聞こえる。眠たいの?と千花が問えば、ふふ、と吐息のような笑い声が聞こえてくる。何処と無く艶っぽさを含んだその声に、千花の心臓がどきり、と大きく跳ねた。 『大丈夫。ここんところ朝早かったから』     
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!