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ぐす、と啜りあげた鼻の音が聞こえる以前に、直哉にはとっくに気がつかれているのかもしれない。そう思いつつも、生理現象なのか?千花の瞳から溢れる涙は止まらない。
『ちーかーちゃん』
「……おうち、ついた」
『ん、よかった。戸締りちゃんとしてね?』
「……ん」
『千花』
「はい」
『おやすみ』
「……おやすみ、なさい」
玄関のドアの鍵を閉めたところで、直哉との電話が終わる。千花が何気なく視線をやったカレンダーの日付は、二月十二日。
あと、二日。
六年前の二月十四日。その日から二人は始まった。
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