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ある日家に帰ると猫がいた。
ベランダ(といっても室外機をおいていっぱいいっぱいの申し訳のないものだ。)に続くドアのかぎはしっかり閉まっている。なんなら防犯用に足した鍵も閉まっている。
築年数は私の年齢といい勝負だけれど、昨年リノベーションしたばかりのアパートにまさか猫一匹通れる穴なぞなく、いやそもそもここペット不可だし。というか、玄関もベランダもあいてなかったし。
「えっとー・・・ご飯とか、食べます?よね?」
ひとまずしゃがんで声をかけてみる。コミュニケーションの第一歩。
にゃあお と一鳴き。えっとこれってつまり肯定?
確かコンビニって猫缶あったはず。さすがに味の保証まではできないけど人の食べ物を与えるよりよっぽど良いだろう。
「わかった、わかりました。ちょっと今から買ってくるから大人しく待っててくださいね。オーケー?」
にゃあお とまた一鳴き。じゃあちょっといってくるねと言いながら、しっかり施錠をして再び外へ。冬の気配が去りつつある今の季節の夜は少し生ぬるい。
無事に猫缶ゲット。お疲れ気味の店員さんになぜかお箸を添えられながら、猫缶(と割り箸)が入ったビニル袋を揺らしながら再び家へ。
鍵を差し込みながら、いなかったらどうしよう、とちょっと不安に思った。
いやいや、今後のことを考えたらいないほうが良いにきまってる。
けれどもしこれで猫がいなかったら、私は幻覚を見たってこと?それってやばくない?
今日は珍しく定時で帰れたけど最近残業続きだもんなぁさもありなんと心を現実逃避させつつドアをあければ、猫はいた。
にゃあと一鳴き。おかえりなさい?ただいま帰りましたよーちょっと待っててくださいね、今猫缶あけますからね
もぐもぐ食べてくれる姿に安心する。可愛い。撫でさせてくれるかな、と恐る恐る手を伸ばしたら拒否されなかった。それをいいことに手を滑らせる。意外と良い毛並みをしてる。
こちらのことを意に介してないだけかもしれないけど、受け入れられたようでちょっと嬉しい。
さて、どうしようかなと頬杖ついて考える。
まあどうしようもないか。
最後にもう一度撫でて冷蔵庫を開ける。さて、自炊でもしようかな。
扶養家族が増えたのだから、少しは節約しないとね。
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