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東郷もバー・ロビンソンの常連だという事が
分かってからは、たまに2人で飲みに来る
過去に何があっても、気兼ねなく話せる
大事な同志には変わりない
「ちっとも忘れてないのね」
「何のことだよ」
「強がっちゃって」
「だから、何のことだよ」
「指輪してたって、寄ってくる女の子は
いっぱいいるじゃない
今日インタビューしてきた広報の子とか」
「あー香水キツい子か」
「やっぱり言い寄られてるんだ」
「食事は誘われたな、断ったけど」
「社内でも有名なマドンナよ?
泣かせたら、敵増えるわよぉ」
「知るかよ、んなもん」
「田中さんは、どうなの?」
「どうって…」
「忘れられないんでしょ?」
「忘れる必要もないだろ」
「そうね、もう誰かのものに
なってるかもしれないし」
「…」
「それは嫌なのね、どこまでも
わがままで幼稚ね」
「…」
「もう、許してあげたら?」
「許す?」
「自分自身を、よ」
俺が俺を許す?
東郷は少し悲しそうな目で
俺を見つめた
「あの頃の大曾根くんは
俺のせいなんだ
俺が殺したようなもんなんだ
って、呟いてたわ、ずっと…
見ていて辛かった」
「…」
「10年経つのね、あれから」
10年か
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