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「ごめん、東京にまで来て嫌な思いさせて」
「いえ」
まだ、こちらを見てくれない
そして、再会を懐かしむには
先ほどのシーンが頭から離れない
全身の血が沸騰している
もう限界だ
「この後、予定ある?」
少し声のトーンを落とす
「いえ、もう直ぐ帰ります」
「連絡先教えて 飯行こ」
田中さんが、やっとこちらを見上げた
「え、」
「いいから、早く」
連絡先の登録画面を開いて
スマホを差し出す
「俺、まだ挨拶回らないといけないし
目処ついたら連絡するから」
少し戸惑った様子の彼女
拒否させるかっとでも言うように
スマホを彼女の手に押し付けた
「は、はい」
観念したのか、手を震わせながら
番号を打ち込む
俺は番号をチラッと確認して
電話をかけた
ぶーぶー
彼女の携帯が鳴る
「それ、俺の番号、登録しといて」
田中さんが目を白黒とさせていると
「大曾根ー」
と、大阪時代の上司が
部屋の中から手を振ってきた
…行かないと
「じゃ、後で 逃げるなよ」
去り際にそれだけ言い置いて、俺は室内へ戻る
頭の血が沸点に達して
それでも身体は田中さんに反応して
少しアルコールも入って
動悸が激しい
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