Ⅶ 再び

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どこまで知ってるか分からないから 伝えておくけど 俺には死別してる嫁さんがいる いなくなってから10年になった 今でも辛い 聞いて欲しいこと、 相談したいこと、 連れて行ってやりたい場所、 一緒に見たかったもの、 感じたかったこと、 決めたかったこと、 まだまだある あったのに とっとと逝っちまった 嫁さん死んでから いろんなことに必死で 毎日生きるだけで、本当に必死で 生きなきゃ生きなきゃ って とにかく、いきなきゃ って 余裕がなかった 嫁さんの葬式終わってすぐに 娘には女親が必要だから 新しい奥さんもらいなさい とか言う親戚もいたけど わけわかんなくて とにかく、もう、生きるだけで精一杯だった 頭がおかしくなりそうだった そんな大阪時代から東京にきて 取り敢えず落ち着いて、 やっと地に足ついて生きれるなと思った着任の日 田中さんに会ったんだよ 「私?」 そう、田中さん 人の顔じっと見てさ ビー玉みたいに丸くてキラキラした目で なんか久しぶりに、おかしくて 真面目な顔して何見てんだよって それで、なんかこの気持ち覚えてるなって考えたら あぁ由実ともこんな出会い方だったなーて 思い出した
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