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そこまで話しきってから
俺は一息つく
田中さんはグラスの底に薄っすら残っている
チャイナブルーを飲み干した
毒々しい色だな
俺はとっくの昔に空になったグラスを
カラカラと回す
「今日の朝、由美がでてきたんだ、夢に
生きてる時より、死んでからの方が
由美を感じることが多い
守ってくれてるんだろうな
由美は、いつになく優しい顔で
しょうちゃんの好きなように生きてね
て言った」
彼女の方をまっすぐ見つめる
「彼氏いないんだよな?」
田中さんは、うっすら潤んだ目を
隠すことなくこちらを見る
「何回言わせるんですか、嫌味ですか」
「いや」
田中さんは俺から視線を逸らさない
「何ジロジロみてんの?」
俺は恥ずかしくなり
自分の顔に手を当てる
すると田中さんは、
ほわっと笑顔になった
あまりにも優しい微笑みに
心がごっそり持っていかれる
今日初めて、笑ってくれた
あぁ
やっぱり
愛しい
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