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「もぉ、そんなに見られると恥ずかしいんだけど」
照れを隠すかのように俺は
田中さんの目を覆った後、
ぽんぽんと頭を撫でた
「女性には失礼だな」
気を取り直して
俺は彼女の頭に置いた手を離した
その代わり、机の上に投げ出された
彼女の右手に自分の手を重ねる
咄嗟に、彼女は手を振り解こうとしたが
させるもんか、と、ぎゅっと握りしめた
もう、離さない
そばにいて欲しい
田中さんはゆっくりと俺を見上げた
握りしめられている手と
俺の顔を交互に見つめる
「あの…」
何を言われても離さない
「今日のキックオフミーティングに、
田中さんが来ること、知ってたんだ」
愛しい人が離れる辛さを
これ以上味わいたくない
「あ、そうだったんですか」
そばにいて欲しい
「会いたかった」
そばで、笑っていて欲しい
「…」
「社内通知でも田中さんの名前探しちゃうし
社内報の結婚報告のとことか、
本当にビクビクしながら読んでる
もう、こんな思いはしたくないんだ」
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