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月第一の地下都市トランキリタティス(静かの海)。午後。街全体が華々しいお祭り騒ぎ。弱い重力を利用した独自の装飾や出し物が各所で行われている。その景色と、「一緒に写真撮っていいですか」「本物? メイクじゃなくて?」「本当に彫刻みたい」「やっぱり人間じゃないんだな」といった言葉の中をふわふわと駆け抜ける黒髪の少女(キサナ・ツバーン)。青年(ナユタ・ゲンセイ)の首元に背後から飛びつき、「お待たせ、ナユタ」言葉を発する。そこまでで有象無象の言葉は止まり、視点がナユタのものに切り替わる。その特徴的な外見から、先ほどまでの言葉はナユタに向けられたものであることがわかる。キサナを追って、個性豊かな男女の友人数名(キサナが飛び級生のためナユタの同年代が同級生)も現れ、会話をする。「よう、キサナ親衛隊」「どうだよ、久しぶりの月は」「こうも人が多いと、声を消しきれないや」「開会セレモニーは?」「あと2時間だ
な。じき夕方にシフトするだろ、パレード追っかけながら何か食おうぜ」等。
月を間近に望む宙域。黒い空間に何かの輪郭を思わせる火花が散り、暗くも鮮やかな虹色に歪んだのち巨大な戦艦が出現した。ウリクラゲのような光の筋。複数の量産機が出撃し、頭部にトサカを付けた隊長機が光の旗を一時的に展開、月に向かって飛び去る。
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