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研究所地下。顔見知りの職員たちが各々の作業で慌ただしくする中を、制止も無視して走り抜けるナユタとキサナ。弱い重力を利用して壁を蹴るように急ぐ場面も。辿り着いた格納庫のスタッフはみな試作機の出撃を急がせていて、主役機デガルダAの周囲には誰もいない。これ幸いと、ふたりはその胸元のコクピットに潜り込んだ。「すごい……これが父さんと母さんの……」途端に、響く轟音と地鳴り。明らかに頭上で何かが破壊された音。キサナを抱き留め格納庫の天井を見上げるナユタ(ナユタはあくまで研究所が世界中から適合者をかき集め新設した特殊チームのひとりであり、元戦闘機パイロットらが務める正規のパイロットを差し置いて出撃する権限は持たない。そのため、両親が深く関わっているらしいマシンをシェルター代わりにするに留まった)。
「反応はこの真下からです!」サンラァフ、地上から格納庫へ向けて結晶粒子砲マテリアル・バズーカ(エフェクトとしては蛍光イエローなどの粘性を持った液体のような見た目。主役機側は蛍光グリーン)を照射。天井が数階層に渡りビスマス結晶のようになって消滅し、ナユタの目に再び敵のマシンが映る。
突如起動、脈動するコクピット、閉じるハッチ。「なんだ!? う、動く……!」デガルダの上半身が持ち上がり、シートに押し付けられるナユタとキサナ。駆動系が唸りを上げ、デガルダは不可視の揚力で浮遊するように、しかし力強く飛翔した。驚愕する研究所所員たち。デガルダは狼狽えるサンラァフ機の眼前を肩のレールガンを放ちつつ通過、後方に反る体勢で弧を描き、やや距離をおいて着地した。煙突状の排気塔から複数の白煙。灯るツインアイ。この時点でキサナは既に意識を失いナユタの膝に乗ったままぐったりしているが、ナユタは上昇のGによる気絶だと思っている。
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