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暗く、じめじめした坑道に、今日もカツーン、カツンというツルハシの音が響く。
リーはこの仕事についてもう40年ほどたつ。
15の時、家を出てからここに来て、ずっと働いている。
手はツルハシに合うように変形し、たこでがちがちだ。
「リー、今日は調子どうだ?」
仲間でほぼ同期のラファエルが話しかけてくる。リーが働き始めたすぐ後に、拾われてきた。
それ以来、一番の友だ。
「あんまり出てこない。この辺はだめかもな。」
そう答えて、振り下ろす。がつんと先が刺さり、鋭い破片が飛び散った。
「痛むぞ。」
ラファエルが苦笑いして掘り出した石炭をツルハシで軽くつついた。
「けど、質はいいよな。」
確かに、不純物が無く、大きく、形が揃っている。
地上のことなど、何も知らない。男たちはひたすら、地下で掘り続けている。
殆どの者が、家族がいない。
地上に出たとき、聞かれることがある。
―何のために働いている?
殆どのものはこう答える。
―掘れば、誰かが豊かになれる。掘らなければ、大勢困る。だから掘っている。
と。
リーは、掘り出した石炭を荷台にのせ、外に走り出した。
外は、社会とは無縁の粗末な下宿が建っている。
そしてただ広い乾燥した茶色の土地が平らに続いている。
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