終章

3/3
前へ
/3ページ
次へ
「人間からの差別?」 「お前でも、この旅のなかでサキュバスやエルフは知っただろう?」 「あぁ、亜人種の魔族か」 「あやつらは昔から人間たちと付かず離れずのよい関係を築いていた。そしてあやつらを見本として、多くの魔族が人間とよい距離感を保てていた。しかし、ことサキュバスに関して、ある日事件が起きた」 「事件?」 「誘拐だ」 「っ!」 「あやつらは人の性欲を吸って生きる、だから犯す、等と言って、一部の人間が奴隷として扱いだした。そこから人間が増長し、被害は増え、魔族のなかでサキュバスと繋がりの深い部族へ、そこから全体へと問題のことが波及していき、過激派が奴隷解放と称して人間を殺した。これが戦争の始まりだ」 「……そんな」 「事態が進んでいけば、発端はお互いの都合のいいように改編されていくのが世の常だ。お前が気に病むことではない」 「でも、それならあいつらは。自分達の仲間のために……」 「お前が手にかけた者の中には、腹いせに人間を奴隷や召し使いにしていた者もいた。私でも手を焼く相手もいた。それをお前は、制裁を下したのだ」 「だからって、俺の罪はなくならない! だって、俺は魔族だからと理由で、村の人々の不明瞭な言葉で、あの子を……」 「メリアの森の獣人の娘か。確かに、あれは今見れば過ちだ」 「なら!」 「だからこそ、お前は私の誘いを受ける価値がある。贖罪の機会を得られるのだから」 「なん……だと?」 「もう一度言う。お前に世界の半分を治めてもらう。そして私と契約を結んでもらう。お互いの危害とならず、お互いが平和に暮らせるために」 「……わかった。お前の誘い、この勇者が受けよう」 「よくぞ決心した。それでこそ勇者だ」  今日は特別な日だ。  今日を境に、世界は生まれ変わる。  今日は、世界最期の日だ。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加