7.Rain ~光正side~

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この時の俺はまだ、 雅に会う気にはなれなかった。 正直に話すべきか、 それとも言わない方が 彼女にとっては幸せなのか。 迷って、迷って、迷い過ぎて。 そしていつの間にか出発の日を迎えた。 新幹線の中でゆっくりと、 彼女との出会いを思い返す。 愛想笑いすら浮かべず むしろ怒ってるみたいな表情で、 俺を真っ直ぐ見つめていたっけ。 …ふふ、怖かったなあ、あの顔。 それがいつしか俺を見るたび 嬉しそうに微笑んで。 その笑顔が見たくて優しくした。 こんなに誰かを好きになることは、 きっともう無いだろう。 ごめん、雅。 ちょっとだけキミと離れるよ。 でも、落ち着いたら会いに行くから。 …ほんの少しのつもりだったのに。 慣れない仕事に忙殺され、 彼女に電話を掛けたのは1カ月後となり。 着信拒否されていることに ようやく気付いた。 翌月まとめて休みを取得し、 ようやく東京へと向かったけど、 既に雅は引っ越していて。 呆気なく、 本当に呆気なく2人の関係は終わった…。
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