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会社の屋上は、喫煙所になっている。だから、聡子はこの会社に勤めてから今まで一度も、屋上へつづく階段に足をのせたことはなかった。
ドアノブに手をかけようとし、──すこしためらう。結局ブラウスの袖を伸ばして、それ越しにドアノブを握った。
外れかかっているのか錆びついているのか、ドアノブはぎこちなく回る。ところどころ塗料のはがれた扉を肩で押すようにして開けると、先輩が屋上の柵に腕をのせ、その上に顎をのせていた。
足が疲れているらしく、先輩はつま先立ちになったり脚を肩幅に広げてみたりと、忙しい。
聡子が近付くと、気配がしたのか先輩が振り返った。肩のあたりでざっくりと切られた髪が、ぱさっと揺れる。先輩は聡子の姿を確認すると、にっこりと微笑んだ。
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