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その轟音は。
「う……嘘でしょッ…!?」
あらゆる現象を閉じ込め、内と外を完全に切り離すほどに強力な結界を容易く貫いた。
外側に張られた二つ目の結界が無ければ、静まり返った夜にとてつもない破壊音を撒き散らすことになっていただろう。それが幸いして、周囲の人々の眠りを妨げることはなかった。
だが仮に妨げることになっていたとしても、彼女にはそれを気にする余裕もなかった。
血塗れで横たわる一人の少年と、その彼を見下ろす存在にしか気が向いていなかったからだ。
弱々しい息を絶え絶えに吐く少年の意識はもうない。白目を剥き、噴き出した自分の血が広がる床に力なく寝そべる。
『見込み違いだったかァ?こんなモンかよ、オレたちを従えるマスターの実力ってのはよォ』
返ってくる言葉はない。すでに少年は瀕死の状態なのだから返せるわけがない。
それでも、それがわかっていても、わかっているのに。
『おいおい、なァにのんきに伸びてんだ?最初の威勢はどこに行っちゃったんですかねェ?』
血にまみれた黒髪を上から踏みつけ、悪魔は言う。
口角をつり上げ、頬肉が引き裂けたような邪悪で凶悪な笑みを見せびらかして。
悪魔は平淡な声で冷酷に言った。
『その無様な有り様―――酷く憤っちまうなァ』
ゴヂュンッッッ!!!!!
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