8月13日、23時。

1/9
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ

8月13日、23時。

 今日、8月13日は全ての日本人にとって特別な日だ。それもあと一時間で終わるのだが。  私はメロンソーダのような緑色に染まった左手で額の汗を拭う。既に顔はかなり汚れてるだろうが、あと少しの辛抱だ。  大きく息を吸った。マスクを着けているので、常に一定の息苦しさがある。  ぱっと見でここにいるGは20体。しかし、まだ続々と新しい個体が現れている。やはり残り1時間とあって、勢いが増している。3軒隣の浜田家もさっきまで粘っていたが、Gが家に上がっていくのが見える。今回はついに陥落してしまったようだ。  この辺りで無事なのはわが家だけだ。それでGたちが集まってきているのだろう。  私はポケットから黒い髪留めを取り出し、私の汗とGの体液で濡れている髪を後ろでくくった。髪留めには小さなさくらんぼの飾りがついている。母の形見として小さい頃から大切にしているものだ。  3体のGが横並びになり、わが家の玄関に近づいてきた。ぐらぐら身体を揺り動かしながら前進する歩行スタイルは、それで立っていることすら私には理解できない。  私は思い切って距離を詰め、右手に持った対G用特殊警棒を右端のGに対して斜めに振り降ろした。     
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!