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太陽が顔を隠し、暗闇の中、静まり返った閑静な住宅街にひっそりと降る雨。決して音を立てることなく静かにゆっくりと。 空が泣いている……そんな表現がぴったりな夜。 無駄や面倒な事は嫌いだが、課題を済ますのに夜食が無いのは耐えがたいことだ。渋々ではあるがコンビニへと向かう。 途中にあるバス停のベンチに人影を確認する。 真っ直ぐな黒髪を胸の下あたりまで伸ばし、シャツとショートパンツからは細くて白い腕と脚が無防備に伸びている。 俺は彼女を知っている。 あまり話すことはないが同じクラスの立花 莉子だ。 彼女はなんでこんな時間にバス停なんかに座っているのだろう。 距離が近くなり、彼女の目からは涙が止めどなく溢れていることがわかった。 よくよく見れば、髪も服もびしょ濡れで、傘を持っていない。 この空の涙と同化するかのようにひっそりと泣いている彼女を見て、俺は、綺麗だと思ってしまった。 しかし話しかける気にはならなかった。 面倒はごめんだ。人のために費やす時間なんて俺には無意味だ。気づかないフリをしてそのまま通り過ぎよう。 視線を逸らして彼女の前を無事通り過ぎる……と、その時だった。 後方から急に腕を掴まれ、よろけて倒れそうになる。 「あなた。同じクラスの宮永でしょ」 立花は俺を下から睨みつける。 「女の子がこんな時間に泣いているのにそのまま放って去るなんて最低よ」 何が言いたいのだろう。 「立花は構ってほしくてここで泣いてるのか?」 「ち……ちがっ……!」 パァァン!! 一瞬何が起こったのかわからず頭が真っ白になった。理解するまで時間がかかったが、目の前の女から平手打ちを思いっきり食らったのだ。チリチリと頬が痛み出す。 「ってぇ」 頬をさすりながら睨み返すと、立花はいつの間にか泣く事をやめていた。 「今日見たこと誰かに言ったら許さない」 それだけ言うと俺の傘をぶんどって去っていった。滅茶苦茶だ。 それが立花 莉子との忘れもしない最悪な出会いだった。
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