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椿ヶ丘高校。最寄りのバス停から15分ほどバスに揺られ、その先にある急勾配の坂道の上にそびえ立つ建物が俺の通う高校だ。
毎朝この坂道を見上げるだけでげんなりしてしまう。家から近いという理由で選んだはずがとんだ見当違いだった。
二年の一学期になった現在でもこの地獄の坂道に慣れることはない。
「おっはよー! 滝っ」
後ろからポンと背中を叩かれる。
「相変わらずお前は爽やかで楽しそうだな」
「そういう滝は相変わらず不機嫌そうだね」
「低血圧なんだよ」
佐々木洸太とは中学の時からの付き合いだが、全てが俺とは正反対な男だ。栗色の髪に少し幼い顔立ち、そして前向きで自由奔放な性格。女子からの人気も高いと耳にしたことがある。
「もうすぐ期末テストだね、はぁ……補習の嵐、憂鬱だよ」
なんでこいつは補習確定を前提に話をしているんだ。
「滝はいいよね、授業中ずっと寝てるくせに赤点取らないんだもん」
「補習にならない程度にはテスト前に勉強してるよ」
納得がいかないのか、洸太は頬を膨らませ、ぶつくさ言いながら視線を俺から学校の方へと変えた。
「あ!」
坂の中盤あたりを歩く人物の後姿を見つけ、表情を一変させる。
「通年学年トップ様だよ! 勉強も運動もできて美人なんてまさに高嶺の花だよね」
後姿でもわかる。立花だ。
背筋を伸ばし凛として歩くその様からは、昨夜の涙は幻だったのでは無いかと思わせる。
「おーい、滝? あ、滝も立花さんが好みだったり?」
「……興味ないよ」
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