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「遅い」
屋上の立花の前に到着するや否や、仁王立ちでそう言われた。
弁当を急いで食べ、真っ直ぐ寄り道せず面倒な階段を登ってきてやったのに、これだ。
「お前がわかりにくい所に居たせいだろ」
雲ひとつない青空の下、屋上には昼食を食べながら談笑している人達がパラパラと居る。立花はその人達からは何故か離れた死角になるような場所に居た。
おかげでだだっ広い屋上を一人彷徨い歩く羽目となった。
「まぁいいわ、本題よ」
長い髪を風になびかせ、立花はいたずらっぽい笑顔で言った。
「宮永 滝。私と友達になりなさい」
「は……?」
何秒止まってしまっただろう。脳が心臓が神経が、全ての機能が活動停止していた気さえする。
いきなりとんでもないことを言う目の前の女は、なおもドヤ顔で返答を待っているようだ。
「なんでだよ。つーか、なりなさいって命令か? てっきり俺は昨日の口止めかと思って来たんだが」
「口止め? あなたは誰にも言わないわ、そうでしょ? 理由は、えーと、そうね、昨日の私の涙を見たからでいいわ」
キョトンとした表情で返され、ますます意味がわからない。
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