6/6
前へ
/6ページ
次へ
「何で友達にならなきゃいけないんだ。お前の周りには友達がいっぱいいるだろうが。それとも友達100人できるかなーみたいなやつか?」 「私の周りに友達?」 「そうだろ。何で泣いてたのか知らないが、悩みがあるんならそれもそいつらが聞いてくれるだろ?」 立花は顎に手を当て、何かを考えているようだ。 「まぁ、勉強も運動もできて友達も多いような奴が、どこに悩んだり泣く要素があるのかわかんねぇけどな」 「……あなた、馬鹿なの?」 真っ直ぐ見つめられた。どこまでも澄んだ瞳に吸い込まれそうになる。 「仮に何もかも持っていたとして、そうだったら悩みがないとか、馬鹿なんじゃないの? そんなこと思う人間が居るなんてびっくりよ」 立花は頭に手をあてため息をつきながら付け加えた。 「あなた、佐々木くん以外友達いないでしょ」 図星だ。クラス替えなどで最初に話すことはあっても、付き合いが面倒で断り続けるうちにいつも一人になっている。 「いいんだよ、俺はそれで」 「ふーん。私も友達いないわよ」 立花は人差し指で俺を撃つ真似をした。 「君しかいない」 「まて! 俺は立花と友達になるだなんてまだ……」 「莉子でいいわ、滝」 予鈴を知らせるチャイムが鳴る。 「さ、教室に戻りましょ」 一体何が起こったのかわけがわからない。脳の処理が追いつかない。俺と立花が友達? 立花に友達がいない? 俺が馬鹿だって? というか傘はどうした、平手打ちの謝罪は? 様々な疑問が脳を駆け巡るが、何も言葉が出てこない。立花…莉子はヤバい奴だという警鐘だけが頭に響いていた。 階段を降りながら先を歩く莉子にひとつだけ聞く。 「なぁ……。昨日の涙の理由は何だよ」 「滝は友達だから、またいつか話さないとね」 足を止め、莉子が振り返る。 「……愛ってなんなのかな」 その表情は哀しく胸を切り裂かれるような切なさを纏っている。 「………」 「なんちゃって。戻ろ」 そう言う莉子はいつもの笑顔に戻っていた。トントンとリズム良く階段を降り教室へと向かう。俺はそれ以上聞けず、続いて教室へと入った。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加