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「何で友達にならなきゃいけないんだ。お前の周りには友達がいっぱいいるだろうが。それとも友達100人できるかなーみたいなやつか?」
「私の周りに友達?」
「そうだろ。何で泣いてたのか知らないが、悩みがあるんならそれもそいつらが聞いてくれるだろ?」
立花は顎に手を当て、何かを考えているようだ。
「まぁ、勉強も運動もできて友達も多いような奴が、どこに悩んだり泣く要素があるのかわかんねぇけどな」
「……あなた、馬鹿なの?」
真っ直ぐ見つめられた。どこまでも澄んだ瞳に吸い込まれそうになる。
「仮に何もかも持っていたとして、そうだったら悩みがないとか、馬鹿なんじゃないの? そんなこと思う人間が居るなんてびっくりよ」
立花は頭に手をあてため息をつきながら付け加えた。
「あなた、佐々木くん以外友達いないでしょ」
図星だ。クラス替えなどで最初に話すことはあっても、付き合いが面倒で断り続けるうちにいつも一人になっている。
「いいんだよ、俺はそれで」
「ふーん。私も友達いないわよ」
立花は人差し指で俺を撃つ真似をした。
「君しかいない」
「まて! 俺は立花と友達になるだなんてまだ……」
「莉子でいいわ、滝」
予鈴を知らせるチャイムが鳴る。
「さ、教室に戻りましょ」
一体何が起こったのかわけがわからない。脳の処理が追いつかない。俺と立花が友達? 立花に友達がいない? 俺が馬鹿だって? というか傘はどうした、平手打ちの謝罪は? 様々な疑問が脳を駆け巡るが、何も言葉が出てこない。立花…莉子はヤバい奴だという警鐘だけが頭に響いていた。
階段を降りながら先を歩く莉子にひとつだけ聞く。
「なぁ……。昨日の涙の理由は何だよ」
「滝は友達だから、またいつか話さないとね」
足を止め、莉子が振り返る。
「……愛ってなんなのかな」
その表情は哀しく胸を切り裂かれるような切なさを纏っている。
「………」
「なんちゃって。戻ろ」
そう言う莉子はいつもの笑顔に戻っていた。トントンとリズム良く階段を降り教室へと向かう。俺はそれ以上聞けず、続いて教室へと入った。
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