それはひとめぼれから始まった

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男にはまったく興味のない城戸里子は、なによりも猫が好き。家にも猫が2匹いるが、それぞれ道路などで鳴いてるところを保護した子達だ。雄のティナと雌のシンディはそれぞれ個性的で仲が悪い。部屋を別々にし、2匹を絶対に会わせないようにしている。 ある日のこと、仕事帰りに 里子は川で一匹の猫を見てくぎづけになる。 その顔、濃い茶色でふさふさした長毛、 そのすべてが里子のタイプ 。ドストライクだったのだ。 川でうろうろしているのだから、きっと棄てられたに違いない。里子はそれからというもの、毎日餌をあげに通った。5月に出会ったので、名前はメイちゃんと名付けた。メイちゃんは、きっと辛い猫生だったのだろう。餌を与えるときに里子の手や足を思いっきり噛むのだ。でも里子は、メイちゃんを川から救いだし、優しい里親さんを見つけてあげようと思った。 しかし里子の家にメイちゃんを連れていくわけにはいかない。仲が悪いシンディとティナのところにメイちゃんを連れていったら、どんなことになるのか想像できたからだ。 里子は里親探しのサイトで、外にいる猫ちゃんだが里親さんを探してあげたいということを切々と訴えたところ、1通のメ―ルが届く。 花島 悟志という男性は、猫の里親にはなれないがメイちゃんの一時預かりならできるという。花島は猫が好きで、猫飼育可のマンションを借りているらしい。たが、週末は必ず実家の大阪に行かないといけないこと、そして、実家にも猫がおり、もしもここで飼った猫を、ゆくゆくは大阪に連れて帰った ときに、猫同士の相性が悪かったことを考えると猫を飼うのを躊躇しているという。 花島もこのサイトでメイちゃんにひとめぼれをしたらしい。花島の提案は、花島のマンションにメイちゃんを連れていき、里親さんが見つかるまで、家猫修行をさせようというもの。そして里子に合鍵をくれた。「僕がいないときは自由にメイちゃんにあいにきてあげてください」 そうして、メイちゃんをはさんで、里子と花島の 奇妙な同居生活が始まった。
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