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 君が空に旅立った三年目のこと。  この年は君がいなくなってから最も嬉しいことがあった。だがそれは同時に君に謝らなくてはいけないことだった。  和彦と香奈さんの間に待望の第一子となる女児が産まれた。君の口癖は「早く孫を抱きたいわぁ」だった。  君があれだけ楽しみにしていたことを私は一人で味わってしまった。  退院して一ヶ月過ぎた頃、私のところに赤ちゃんを連れてきてくれた。  君の名前の『和美』から『美』をとって『奈美』と名付けたそうだ。  君に赤ちゃんを見せたかったと和彦と香奈さんは涙を流していた。  三十二年ぶりに抱いた赤ちゃんは本当に軽く、小さかった。そして赤ちゃん特有のミルクの香りがとても懐かしかった。  私の指をぎゅっと握り返す姿を見て、命を感じた。  死ぬものもあれば、生まれるものもあると。    三人が帰宅した後、曖昧な記憶を頼りに、和彦が産まれた時のアルバムを探した。  久々に見た、産まれたばかりの和彦の顔は、客観的に可愛いとは言えないものだった。  しかし、初めて抱いた日、この子より可愛い子はいないと心の底から思ったのを記憶している。 「ねぇ見て。目や鼻なんかはあなたに似ているわね。すっごく可愛いわ。大切に大切に育てましょうね」  君の言葉や表情が鮮明に蘇った。  写真に写る君は、晩年の少し(ふく)よかな体型とは違い、痩せていて鎖骨が強調されていた。出産直後でこれなのだから相当痩せていたに違いない。  私としては晩年の膨よかな体型の方が好きだった。  こんな些細なことでさえ、今となっては伝える手段がないのだから、君との距離は計り知れないものだと感じた。
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