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君が空に旅立った四年目のこと。
この年からは『ゲートボール会』や『歩こう会』といった地域の催し物に積極的に参加した。次に君に会った時、土産話は多い方が良いと思ったからだ。
『歩こう会』の中には私のように妻に先立たれた者もいて、色々な話ができた。
その中で『終活』といった聞きなれない言葉を耳にした。簡単に言うといつ死んでもいいように遺書を書いたり、身の回り(葬儀やお墓のこと)のことを自分で予め行うことらしい。
和彦達に迷惑をかけないようこれらを滞りなく終わらせると、私は私の還暦を祝って君と行った、静岡の旅行を思い出した。
君と最後に行った旅行。
あの場所にもう一度行きたい。
思い立ったらすぐ行動に移すのが私の性格だから、その翌日には新幹線に乗っていた。
乗り継ぎなどを何回か繰り返したのち、目的の駅を降りると懐かしい景色と爽やかな葉の香りが目や鼻に流れ込んできた。
旅行の際に撮った写真を持参していたので、その一つ一つを見比べながらまわった。
静岡城や静岡県立美術館、久能山東照宮など写真に写っている場所を全てまわり、君との旅行を思い出した。
へろへろになりながらも、なんとか旅館にたどり着くことが出来たが、思った以上に息が上がっていたし、心拍が平常になるのにとても時間がかかった。歳をとったなと実感した。
次の日、『玉露庵』というお茶屋に足を運んだ。この旅最大の目的はこの店にあった。
そこの店主と撮った写真を店員に見せると、店主に話を通してくれた。
話を聞いた店主は快く承諾し、裏から出てきてくれた。
君の話をすると、気の毒そうな顔を一瞬したが、その後君に美味しいお茶の淹れ方を聞かれたと教えてくれた。
私の知らないところでも君が私の為に尽くしてくれたのだと知った。
美味しいお茶の淹れ方を教えてあげようかと言われたが私はそれを断った。
私に美味しいお茶を淹れるのはいつだって君のすることだったから。
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