さよなら、安堵、また今度。

＃３

　ゴールデンウィークを過ぎると、あっという間に中間テストの時期がやってくる。一応、進学校である我が校は全面的に放課後の部活動が禁止になる。ただし、もともとが自由実施の扱いになっている朝練までは禁止にならない。厳しいことで有名な柔道部は全員参加、当然のことながら弓道部はどちらでも良いとなっている。そもそもテスト期間だろうがなんだろうが関係なく自由参加なので、本当の意味で自由と言える。毎朝欠かさず参加しているのは、中村くらいだろうか。あとは比較的参加していることが多いのは、高山と僕、それから瀬古だ。
　簡単に安土を整備して、的を立てる。今日は二つ、小走りに道場に戻ると『さんきゅ』と渋い声。すでに着替えを終え、弓に弦を張っている中村だ。特に返事を返さず、僕も手早く着替える。諸々も準備をして、最後にかけを手に付ける。
　矢を持ち、すり足で歩く。背筋を伸ばし、呼吸を整えながら決められた動作をなぞる。パンっと乾いた小気味よい音がする、どうやら中村の一社目は的中らしい。看的小屋には誰もいないから、○はつかないけれど。