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 八節、会。矢が滑り落ちたので顎で乗せなおす、離れ。的枠に当たったのか鈍い音。残心。一見して○か×か判別がつかない、けれどきっと×だろう。立て直していこう、そう思いながら二射、三射と外し、ようやく四射目で的中。礼をして、摺り足で射場から出る。 中村は僕のほうをちらりと見たが何も言わず、矢の回収に向かった。  その後、何度か射を繰り返し、時間になったので着替える。二人で連れ立って、校舎のほうへ。柔道場を通りかかると、同じくちょうど朝練を終えた村浪がふらりと出てくる。 「はよっす」 肩にタオルをかけて、手をあげる。思わず熊が鮭を獲るポーズを思い浮かべてしまうのを隠して、こちらも挨拶を返した。 「朝から精がでるな」 「柔道部ほどやない」 二年の時に同じクラスだったらしく、気安い雰囲気で中村が言う。 「今年の一年はどうや?」 「まぁ、そこそこやな。顧問が引っ張ってきたやつも何人かおるし。そっちは?」 「経験者なんかおらへんから、みんな同じ感じや。とりあえず、足腰を鍛えなあかんから坂ダッシュやらせとる」 「毎年、最初っから弓に触れると思ってるやつがおるから、テスト明けには飽きて来んようになるのがおるやろ」  厳しいことで有名な柔道部よりも退部する生徒が多いのは、村浪の言うとおりクラブ説明の仕方もあるのかもしれないと思う。僕たちの教室の前で中村と別れ、室内に入り自分の席へ。鞄を置いて時計を見るとまだ少し時間があるので、トイレに行っておこうと教室を出る。     
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