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校門を見下ろせる窓を右手にして、廊下を歩く。五月晴れというのは空想の中の概念かもしれないと思わせるくらいに見事な曇天だ。朝の天気予報ではしばらく雨は降らないとのことだったけれど、このパッとしない天気が続いたまま、梅雨に突入するだろうとのことだった。雨は嫌いではないけれど、これから暑くなるということには辟易する。
ふと前方を見ると清水と瀬古が向かいから歩いてくる。同じクラスではないのに珍しい。二人も僕に気付いたのか、瀬古が手を振ってくる。すると清水が瀬古に何ごとか囁いた。
勢いよく清水のほうを見る瀬古、なんだかポカンとしているように見える。一瞬の間の後、ゆっくりとこちら側に首だけを向けた。驚いたような顔のままだ。そして、また、清水に向き直ると無理に笑っているような雰囲気で、ぶんぶんと手を振っている。そうこうしている内に僕は二人までの距離がなくなる。
「ちわっす」
朝でも夜でも共通の挨拶を投げる。
「ちわーっす」
清水はなんだかニヤニヤしながら応えた。
「おはよ」
少しうつむきがちの上目使い、小さな声で瀬古は言う。
「二人が朝から一緒って、珍しいやん」
「中島先生に質問に行ったら、職員室に入れなくてさ」
「ああ、テスト期間中やでな」
「困ってたら、智恵子が通りかかって助けてくれたのよ。ね?」
瀬古は小さく頷く。
「それで質問が終わるまで待ってたん?付き合いええな」
「色々あったって聞いてたから、ちょっと心配やったし」
「ありがとう。智恵子は優しいし、可愛いし。言うことなしだね」
あはは、と笑いながら清水が話す。
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