プロローグ

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「人気の式場を押さえての結婚式、披露宴はそこに至るまでの準備が大変だしお金もかかるし、何より派手なだけで機能性ゼロの、身体に負担がかかりまくりのウェディングドレスに身を包み、目の前のご馳走にがっつく事も許されず、わざわざお越し下さった皆様に長時間笑顔で対応し続けなくてはいけないある意味修行のような披露宴なんかこれっぽっちも憧れはない」とのこと。 当人達がそう望むならと、我が家同様、あちらのご両親も納得したようだ。 その代わり、新婚旅行だけはちょっと贅沢に、ヨーロッパを2週間くらいかけて回ってくるらしい。 しかもクリスマスの時期をまたいで。 兄ちゃんがそんなロマンチックな事を思いつくワケがないから、それも彼女さん主導のプランだろう。 金の使い処を見極める能力に優れている、やりくり上手な良い奥さんになりそうだ。 ちなみに兄ちゃんと彼女さんは職場の同僚である。 ウチの父さんが所長を務める、自宅敷地内に建てられている総勢8名の小さな会計事務所の。 父さんと兄ちゃんは税理士、彼女さんは内勤専門の事務員としてそこで働いているのだ。 オレも父さんと同じ道に進もうと思った時期もあったけれど、数字ってやつがどうにもこうにも苦手で、早い段階で見切りをつけて、今は全く別の職業に就いた。
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