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俺と男は、数秒間顔を見合わせ固まった。 改めて見ると、真っ白だ。髪も、肌も信じられないほどに。 ただ……小さい。子供にしても小さい。俺の半分くらいの背丈しかなさそうだ。 「…………あの~?」 再び話しかけられる。確かに目の前にいる男から発せられた声だ。 そして思う、こいつは人間だ。今まで妖と対話できた事なんてない。あの笛の音色は……純粋に音が良かったから自然と足が引き寄せられたのだろう、よくあることだ。 焦って大声を出した事は都合よく忘れて、俺は深いため息を吐く。 その場を後にしようと振り返ると、男は焦ったように叫ぶ。 「ま、待って!僕が見えるんでしょ!?お願い見て見ぬふりしないで!悪い事はしないからー!」 「……すまないが、俺は忙しい」 「行かないで!話だけでも聞いて!お願い!」 着物の裾を引っ張って静止させられる。が、力が弱くて握る手は直ぐに離れてしまった。 顔だけ振り向き様子を見ると、涙目で俯いていた。その姿を見るとなんだか可哀想な事をしている気分になり、俺は再びため息を吐く。 「……なんだ」 「あ、聞いてくれるんだ……ありがとう……。君、名前は?」 「人の名を聞く時はまず自分から名乗れ、礼儀だろ」 「うぅ、さっきからなんでそんなに厳しいの?まあいいけど、僕の話を聞いたら高圧的な態度なんてとってられなくなるからね」 なにやらぶつぶつと呟きながら立ちあがる男。土で汚れた着物を軽く手で払うと、謎に自信満々な顔で俺を見上げ、はっきりと自分の名を告げた。 「僕の名前は(しょう)、この神社に祀られてる神様だよ!」
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