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雲ひとつない青空に浮かぶ太陽。 直撃する眩しさに顔を顰めながらも、中庭のベンチに仰向けで寝そべる。 夏になったら場所を変えなくてはと考えながらも、今の季節は春。 ブレザーを脱ぎ頭から被れば、眩しさは気にならなくなった。 ぽかぽかとした陽気が心地いい。 うとうとと眠りの底に落ちそうになっていた、そんな時。 「──好きです」 一気に目が覚めた。 聞こえた声の大きさからして、ベンチのすぐ背後で発せられた言葉なのだろう。 少し高めの少年の声だ。 そういえば、とこの中庭のジンクスのようなものを思い出す。 『この学園の中庭で恋を成就させた二人は、永遠の絆で結ばれる』 微笑ましい、けれど胡散臭い。 そんなジンクスだが、恋する思春期の少年たちにとっては縋りたいものなのかもしれない。 「……本気か?」 「はい。ずっと、ずっと先輩のことが好きでした。四年前、助けてくれた時からずっと」 少年の声に答えたのは低い声。 どこかで聞いたような気もする声だ。 しかし、四年前。 この少年は四年もの間ずっと相手を想い続けていたのか。 健気だと思う。 非常に一途で健気だ。 想うに留めていた恋を、告げようと決意するには沢山の勇気が必要だったはず。 強い少年だ。 「そうか。よく、告げてくれた。ありがとう」 「っ」 「答えだが、俺も君のことが好きだ。これしか持ち合わせていないのだが……」 ひゅっ、と息を呑むような音がする。 きっと相手の言葉が信じられないのだろう。 それか、好きだと言われて感極まったのかもしれない。 いずれにしろ、微笑ましいことこの上ない。 「付き合うか」 「っ、はい!」 涙声の少年の声が響き渡る。 ああ、きっと彼らは幸せの最中にいるのだろう。 遠ざかっていく二人分の足音に、少しだけ身を起こす。 身長差のある後ろ姿。 どちらからともなく、そっと伸ばされ触れ合った指先。 離れかかった小さな手を覆うように、強引に絡み合わせる大きな手。 全てを見届け、そうして、そっとベンチに座り直し胸につっかえた言葉を吐き出す。 「──尊い」 恋という感情は、尊いものだ。 それを実らせ恋人同士になった者たちもまた尊い。 なにより、男同士という禁忌の壁を乗り越えた彼らの精神が、讃えられるべき尊さを持ち得ているのだ。 そして、祈ろう。 彼らの縁に、心からの祝福を。
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