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『帰りますよ』
『わかりました』
サタナエルは空中に、契約者らしき人物は沙夜の家の前に。
そんな距離で、そんな小さな声で会話が通じてるのかと感じるようなやり取り。
まるで月の光に背くように、一瞬にして【そいつら】は消えてしまった。
「気配がなくなりました」
「出ましょう」
積み重なった家の残骸。
その中で、屋根の残骸は沙夜たちを覆い隠すのは十分な大きさであったようだ。
屋根やその他の柱などの瓦礫。それぞれを沿うように、光が駆け抜けた後それらは浮きあがった。
そうすると見えてきたのは黄色い半円。
沙夜とブリュンヒルデはこれに守られていた。
浮き上がった瓦礫は、沙夜たちを守る黄色い半円が蒸発すると同時に、塵となって風に乗って消えていった。
「はぁ……なんだったの…」
「わかりません。ですが我々を最初から狙ってきているのは間違いないと言えますよ」
「でもブリュンヒルデ、助かったわ。ありがとう」
「私は小さな結界を作り出し、沙夜を瓦礫から守った程度です。礼を言うのならフレイヤ様に」
「えっ…」
沙夜が驚くは当然と言うべきだろう。
実はブリュンヒルデの結界はあくまでも瓦礫から沙夜を守っただけであり、気配を消すことはできない。
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