冷たい花

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玄関の受付を10時から11時までイクミンと担当する。 「ただで豆腐ケーキ食べられるって聞いたんだけど、どこに行けばいいの?」 土曜日という事もあり、料理倶楽部の限定無料試食目当てに、保護者や近所の方が多く訪れ、受付は大忙し。 11時、受付の交代時間になった頃、 「花梨ちゃん、チアダンス部のステージは何時から?」 雅也くんと中本くんが玄関に現れた。 PTA臭強かった空気が一変に華やかになったよう。女子が、あか抜けた彼らに目が釘付けになっている。 「中本くん!」 教室に帰ろうとしていたイクミンが戻ってきた。 「遊びに来てくれたの? うちのクラスのカフェも覗いてって~」 誰の彼氏なんだ? と思うくらい中本くんに馴れ馴れしい。 「コーヒーあんの?」 「あるある! 案内するね! 」 イクミンは、雅也くんと中本くんの手を取って、中に入っていく。 「ちょ、イクミン!」 交代の時間とはいえ、次の人が来ないと代わられないのに。 「花梨ちゃん、また後でなっ」 雅也くんはイクミンに手を握られてご機嫌だ。 中本くん達につられるように女子達がゾロゾロ移動していく。 ポツン…と、受付に残された私。 次の受付係りは、なかなか現れなかった。
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