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「これ、ガッって開けていいの?」
「いいけど。中身、破ったらもう使えねーよ」
「中身…?…」
そう言われたら慎重に開けざるをえない。
ピッ……と開けて出てきたのものはーー
「口の中の、風船ガムの膨らむ前の状態みたいだね……」
円状の薄っぺらいゴム弁だった。
階段の踊り場から差し込む光に当てて、その透け具合を見る。
「花梨ならマジで口に入れて膨らましそうだな」
「入れないわよ、食べ物じゃないんでしょ?」
「ん。それが避妊具のコンドーム。薄ければ薄いほどいい」
「え!」
私は、慌ててそれから手を離した。
「初めて見た?」
中本くんは、笑って私が投げたゴムを拾った。
まさか、今回は本物だったなんて。
「お、思ってたのと違うから」
実際はもっと、頑丈で、その、
「どう思ってたんだよ?」
中本くんは、意地悪く笑って私の頬を引っ張った。
「もっと、リアルな形なのかと」
「リアル?」
指で表してもいいけれど、それは恥ずかしい。
「うー……何て言うか、事務員さんが使ってる指サックみたいな」
私の言葉から、想像したらしい中本くんは、「入らねーだろ」と、爆笑してた。
「昔はそれみたいに厚くて丈夫だったんじゃね? 牛の腸で作ってたって聞いたことあるから」
「ヘェ……」
どうでもいい豆知識まで披露して、中本くんはゴムを親指にはめて遊んでいる。
見ながら、そんなので避妊できるんだなって不思議に思った。
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