冷たい花

35/38
前へ
/247ページ
次へ
くすぐったい、それに、なんか変な気持ちになってくる。 私は、体をよじって倒れそうになり、階段に手を付いた。 「ま、間違ってるよ」 「何が?」 「キ、キスする場所」 初めは首筋なんて。肝心なところ、抜けてませんか? 「あぁ…」 中本くんは目元を緩ませて、私の唇を見つめた。 「花梨の口、甘いのと辛いのと、どっちだろうな?」 そして。 唇を、私の唇にそっと重ねてきた。 思ったよりも、柔らかい感触だった。 咄嗟に目を瞑る。 「「在校生の皆さんはーー」」 さっき迄は耳に入ってこなかった、校内放送が遠くから聞こえてきた。 甘い砂糖の香りに男の人の肌の匂い、微かに感じるフルーツ系の柔軟剤の香りと、中本くんからは、いろんな匂いがした。
/247ページ

最初のコメントを投稿しよう!

727人が本棚に入れています
本棚に追加