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「すぐに指揮権を再構成しなければならなかったので、戦闘区域を一望できるこの地点を選びましたが、問題があったでしょうか」
熱帯地方のジャングルの風が吹いていた。身体がこのままさらに空高く吹きあげられそうだ。
「いや、正しい判断だった。ジャン・ピエールの死亡は確認したか」
「はい、残念です」
「どんな犠牲を払ってもかまわない。遺体を回収にいかせてくれ」
敵が遺体になにをするかわからなかった。タツオは耳や鼻や手首を斬り落とされた戦死兵士の遺体を、戦闘資料でいくつも見たことがある。ジャン・ピエールの遺体にそんな野蛮なことをさせる訳にはいかない。だいたい遺体を残して逃げたとなれば、敵兵からあざけりを受けることになるだろう。これは戦場で戦う兵士のプライドの問題だ。
「谷少尉の雲山改2機の運用を引き継ぎ、遺体の回収に向かわせます」
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