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氾帝国では兵士の生命よりも戦闘機のほうが重いと考えられていた。ジェットエンジン一基が兵士10名分とうたわれたざれ歌もある。タツオはそっといった。
「マルミ、頼む」
後方支援を終えた幸野丸美少尉は、すでに空基地内に侵入し、本体と合流を果たしていた。マルミは狙撃銃でも雲山改の機銃でも、射撃の名手である。
夜空に咲いた白いパラシュートのした、操縦席が風に揺れている。マルミが運用する雲山改から短い機銃掃射のモーター音がうなった。コンマ数秒のあいだに17発の機銃弾が、空を縫い留める。オモイが報告した。
「敵パイロットを仕留めました」
タツオは静かにいった。
「よくやってくれた、マルミ、オモイ。では、ジャリワット空軍基地制圧の最終段階にはいる。雲山改全機、配達は終わったか」
「はい」「おう」「終わったよ」
あちこちから同時に返事が戻ってきた。各機には四発ずつの破壊工作用の爆雷を積んでいる。
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