2章

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   菊代とシゲは玄関を上がったところにちんまりと並んでいた。二人とも小さくて、おじいさんとおばあさんであることに間違いなかった。けれど肌は艶々して、頬はピンクに染まり、額に汗をかきながら笑顔で凛を見る目は好奇心できらきらしていた。髪は二人そろってシルバーグレーで、ビビッドな緑や黄色のアフリカを思わせるTシャツをペアルックで着ている。 「凛ちゃん」  と呼んだ菊代の声も張りがあってよく通った。 「はい」  思わず返事をした凛に、菊代とシゲは顔を見合わせ頷きあって嬉しそうに笑う。 「うん、いい子いい子」  にこにこしたまま菊代がそう言って、凛の半そでのシャツから出た腕をぴたぴたと軽く叩くように触った。  そしてまた二人で顔を見合わせてにこにこしている。 「さ、今夜はパーティですよ!」  祐生の言葉で居間へ入ると、テーブルの上にはとても五人では食べ切れそうにない量の、しかも統一感のない料理が並んでいた。  ほうれん草とソーセージのキッシュ、刺身盛り合わせ、トマトとモッツアレラチーズのパスタ、きのこのアヒージョ、鶏肉の香草焼き、温野菜のバーニャカウダ、散らし寿司…
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