2章

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   玄関の三和土には、呆れるほどたくさんの靴が脱ぎ散らかされている。なぜか子供やおばあさんが履くような靴まである。  祐生がスニーカーを靴箱にしまってスペースを作ってくれたところに靴を脱ぐ。七海は足でその辺の靴を避けている。 「おじゃま、します」  家の中には花のような甘い香りが漂っていた。  玄関から長く伸びる廊下の両側に複数のドアが並んでいる。  一番手前の左のドアを開ける祐生の後について入るとそこは台所で、食器棚やテーブルがあり、そのテーブルの上にはふりかけやラー油、複数の料理本、急須、カップスープの素など、ごちゃごちゃと雑多なものが置かれている。  奥にあるすりガラスの扉の先にはとても広い居間があった。台所を背にして左側は縁側のある大きな窓。窓の先は庭に続いている。右側の壁には廊下へ続くドアと天井までの本棚。「この本棚は祐生と私で作ったの」と先に入っていた七海が誇らしげに言った。居間の真ん中には台所にあったものよりさらに大きい八人掛けのテーブルと椅子がある。その奥に置かれた大きな焦げ茶色のソファはとても座り心地がよさそうだ。
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