2章

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   何から聞けばいいのかと迷っているうちに、鼻歌を歌いながら七海が「二階も案内するねー」と言って廊下へ出て行くので慌ててついていく。  階段を昇るとやはり長い廊下の両側に扉が並んでいる。七海は左側の一番手前の扉を開けて凛の部屋だと告げた。  そこは日当たりのいい六畳の和室で、押入れに布団があるだけで他には何もない。いつの間にか祐生が運び込んでいたらしい凛のキャリーバッグだけが場違いにカラフルな色でポツンとある。 「勉強は居間ですればいいから机もいらないでしょ」  七海は腰に手をあてがらんとした部屋を見ながら言った。 「さ、次は隣だけど、ここは今空いてるの」  覗くと小さな仏壇と洋服ダンスがあるだけの八畳ほどの和室だった。 「ここは菊代ちゃんの部屋」  七海の言葉に凛は首を傾げる。 「菊代ちゃんは私の祖母。祖母の家なの、ここ」  凛は黙って頷くが、心の中ではおばあちゃんのことを名前で、しかもちゃんづけで呼ぶなんて変わってると思っている。 「あの、じゃあ、おばあさんが亡くなったからこの家に住んでるんですか?」  仏壇を見ながら聞くと、七海は凛をじっと見て、次の瞬間吹き出した。  笑いすぎて目尻の涙を拭きながら「菊代ちゃんを勝手に殺さないでよ~」と言う。
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