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「お待たせしました。熱いから気を付けて下さいね」
精神が崩壊するギリギリのところでタコ焼きが渡された。これを食べて、冷静になるしかない。
佐藤は大きく深呼吸をして、タコ焼きを口に運んだ。
……何だ、これは?
「それは当たりですね。大粒のイチゴ入りですよ」
カツオ風味の出汁とイチゴの酸味が最悪のハーモニーを奏でていた。吐き出したい。でも、笑顔で覗き込む田中が可愛すぎて吐き出せない。
「さあ、次をどうぞ」
逃れられないのか? 意を決して、次のタコ焼きを頬張った。変な弾力が口内に広がる。
「あっ、大当たりです! スーパーボールですよ。食べた後に遊べますね」
食べ物以外も入っているのか!?
地面に転がって悶絶している客が何を食べたのか想像したくない。
助けてくれ……そう願っていると、進退窮まった状況で救世主が現れた。
「田中さん、何やってるのよ」
「あっ、総務部の山本さん」
「あなたのタコ焼きを食べたって人が、次々と医務室に駆け込んで来るのよ。タコ焼きの中に変な物ばかり入れたでしょ?」
「皆さん、美味しそうに食べてくれました」
「営業停止です」
「えっ?」
当然の結果だ。
こうして、九死に一生を得た佐藤。しかし、田中の店も閉店してしまった。
「ばいーん……ばいーん……」
そして、高橋は逝ったままだった。
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