俺の幼馴染

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俺の幼馴染

 三歳の時、幼稚園で知り合った幼馴染。  何をするにもウマが合い、二人で一緒に行動している内、俺達は自他とも認める親友となった。  その仲が、十年以上経過した今でも続いてるんだけど、最近母親が幼馴染と関わるなとうるさい。  理由を聞いても、具体的なことは何も言わない。ただ『もう関わってはダメ』と言うばかりだ。  もしかしたら、俺が幼馴染と仲がよすぎて、他に友達を作らないことが原因かもしれない。でもクラスの連中とかは、どうしてか幼馴染を仲間外れにしようとするから、そんな奴らと友達になるなんてこっちからお断りだ。  小さな頃からずっと一緒の大切な親友。友達なんて幼馴染一人だけで充分だ。  俺はそう思っていたけれど、ある日、幼馴染にいきなりこんなことを言われた。 「◯ちゃん。俺、もう◯ちゃんと一緒にいるのやめる」  唐突に告げられ、俺は茫然と幼馴染を見つめた。その相手の口からとんでもない言葉が続く。 「俺は◯ちゃんのこと大好きだし、ずっと一緒にいたいと思うけど、おばさんの気持ちも判るから」  おばさんと言われてすぐピンときた。幼馴染は母親に何か言われたのだ。  一瞬で頭に血が上り、俺は幼馴染を置き去って家へと走った。  いつもは居間か台所にいる母親は、その日、何故か仏間にいた。仏壇に向かって正座し、手を合わせて何かブツブツとつぶやいている。その姿に若干毒気を抜かれ、怒鳴りつけるのを堪えた俺の耳に、母親のつぶやきの内容が入ってきた。 「△ちゃん。ずっと◯と仲良くしてくれてありがとう。でも、もう◯と一緒にいるのはやめて。あの子、本当に△ちゃんのことが好きで、ずっと△ちゃんにべったりだったから、いなくなったらきっと淋しがると思うの。でも、それでもいいから◯の側から離れて。ちゃんと天国へ行って。そうじゃないと、△ちゃんのお父さんもお母さんもずっと悲しいままになっちゃうよ」  …うちの母親は何を言っているのだろう。これじゃまるで、アイツがもうこの世にいないみたいじゃないか…? …!  頭の中にありえない映像が次から次へと浮かび、流れては消え、また浮かんで流れていく。  あの日聞かされた△の訃報。葬式の場面。遺影の中で笑うアイツの姿。
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