屋上・喧嘩

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屋上・喧嘩

「アンタ、っとにアホちゃいますの?」 なんやのこの怪我、と呆れながらそう言った。 顔の前に出された拳は、手の甲の皮膚が破れ、滲んだ血が乾いてこびりついている。 もう見ているだけで痛い。 その拳の持ち主は気まずそうに、自身の拳を俺から取り戻そうとしている。 まあ先手をとって手首を掴んでいるから無駄であるが。 それでも手の甲の筋を何度か引きうらせながら抵抗していたが、諦めたのか溜息をつきながら手の力を抜いた。 「…痛くすんなよ」 「子供か。痛くない消毒なんてあらしまへんよ」 ブスくれた顔でそういう彼の拳に遠慮容赦無く消毒液を振りかける。 「っぃ……!」 「はいはい、動かさんでな。あーあー前の傷も治っとらんのにまったくアンタは」 反射で手を引くのも構わず、少し前まで枕代わりにしてた鞄から包帯を取り出す。ん?なんで持ってるかって?そんなん目の前のおバカさんが割としょっちゅう怪我しとるからやな。 授業にも滅多に出ないくせして成績は無駄に良い。これに関しては俺も人の事言えんけど、売られた喧嘩はとことん買う。しかも隠れてだがタバコも吸うし酒も飲む。顔がいいから女にも困らない。 気ままに学校へ来ては屋上でサボり。 まあ、こいつと初めてあったのも、今日みたいに俺が屋上でサボってた時なんやけども。
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