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題【魔法ーマジックー】
親戚の経営しているカフェを後にして、その足でふらふらと当ても無く歩いていた。
手に持ったトランク型の鞄は先ほどまで使っていた商売道具。
とはいえ、趣味の延長線のバイトのようなものなので、バイト道具と言う方がしっくりくるが……、とにかく仕事で使う道具が色々入っているので結構な重量があり、歩く度にずっしりと掌に食い込んでくる。
どことなく疲れた気分で行きの道すがらに見つけた公園へと足を踏み入れると、その公園に設置されているベンチに腰を下ろした。
広い公園は緑の芝生が広がっており、子連れの親子がちらほらと見受けられる。
のどかな光景をぼんやりと見つめながら疲れた体を休めていると、不意に遠くから自分を呼ぶ声が聞こえてきた。
こんな場所で一体誰だろうと内心首を傾げつつも、声のする方へ顔を巡らせる。
「………?」
「よっ! 久しぶりだな!!」
「げっ…」
自分の名を呼びながらこちらに大股で近付いてくる男の姿を見止めて、そしてそれが天敵だと気付いた瞬間。露骨に眉をしかめた。
「……随分大きい鞄だな!何が入っているんだ?」
こう大きい鞄を常時持ち歩いている人間は少ないし、珍しいデザインだから気になったのだろう。そう分析していたが、疲れた頭でそういえば、と思い立つ。
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