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1拍空けて、少女は嬉しそうにきゃあきゃあと声を上げる。
「…おにーたん、まほーつかいしゃん!! しゅごいしゅごい!!」
足元に散らばった花をじっと見つめながら、小さな手を一生懸命に叩くその少女に、彼は口元だけを小さく綻ばせて笑った。
「にーたん、あたちのしゅきなおはなしゃんも、だせりゅ?」
「…………ああ、魔法使いだからな。……何の花が好きなんだ?」
目をキラキラと輝かせながら見上げている少女に、彼は苦笑を漏らしながら、それでも優しくそう問いかけていた。
「ひみゃっひまわり!」
言って、その少女は自分の髪の毛についていたヒマワリのピン止めを指差した。
今の季節は春。
一体どういう仕掛けかは知らないが、彼が手のひらから出していた花も全て小さな春の花だ。
大きな、しかも夏の花である所のヒマワリなんて、流石に出せないだろう。
しかし少女はキラキラとした瞳で彼を見つめていて、そんな説明が通じるかは分からない。
ちらりと見やれば、彼は落ち着き払った表情でそれらしく頷いて見せた。
「わかった。ヒマワリだな」
言って、彼は手のひらを下にして、ゆっくりと何かを掴むかのように指先を動かしながら腕を上げた。
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