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空中を掴むかのようなその動きに反応するように、地面に落ちていた大量の花達がふわりと浮きあがる。
浮き上がった花々は、彼の手のひらに吸いつくように近付いて、カラフルな花のかたまりへと変わる。
彼がそっとその手をどけても、変わらずその花々の集合体は空中でふわふわと浮かんでいた。小さな花が集まって、まるでひとつの大きな花のように見える。
殊更ゆっくりと片手を軽く掲げて指先をパチンと鳴らした。そのスナップを合図に、空中に浮かんでいた花々が途端、風にでも吹かれたかのように重力に従ってはらりと散る。
その散っていく花々の中から現れたのは、輝かしいまでに鮮やかな黄色をしたヒマワリの花だった。
他の花々と同じように重力に従って地面に落ちようとするそのヒマワリを、彼は空中で軽やかにキャッチした。
「わああぁぁぁぁ……!!」
少女がとても嬉しそうな顔で歓声を上げた。
彼は勿体ぶった調子で、さながら役者のような仕草でその場に膝をついてそっと少女にヒマワリを差し出す。
「まほーつかいしゃん、あいがと!」
花が綻ぶような笑顔でそう言って去って行った少女を見送って、彼はふうっと息を吐き出した。
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