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「御託はいりません。もうティーロに近づかないで下さい。もちろんこの屋敷にも」
「そ、それは…」
しつこい。
殴り倒して罵って、煮て焼いて切り刻んで、魔物の餌にしてやろうかという考えが脳裏に浮かぶ。
しかし、俺がそんなことをしてティーロの耳に入れば、怯えさせてしまうかもしれない。王族を殺したともなれば、ティーロにも被害が及ぶかもしれない。
「帰ってください」
残念ながら、王族に行使できるのはこの屋敷の家主としての権利ぐらいだ。
ティーロの部屋に居座りそうな兄を放置するために、ティーロを抱き上げて、寝室に運んだ。
しかしながら、兄のしつこさ――ある意味しぶといと言えるのだろうが、それを思い知るのはその後の事だった。
三日も空けずにやってきてはティーロに貢ぎ始めたからだ。
「何を考えているんですか! 兄上がここに来ればティーロが怖がる!」
「謝罪に来て何が悪い!」
「そういう態度です! あの行為でどれほどティーロが傷を負ったか!」
「だから来ているんだろう!」
「兄上が来れば、ティーロがあの時の事を思い出すかもしれない! それが分からないんですか!?」
うぐぐ、と言葉に詰まりながらも、俺に貢物が詰まった袋を押し付けると、怒ったようにドスドスと足音を立てながら帰る始末。
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