第一部 序章

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 それは無言の命令。  俺は売られてる。  金のやり取りを何度か見たことがある。   断ることなんてできない。  一言でも否定する言葉を発すれば、待っているのは立ち上がれなくなるほどの暴力。  そして、俺の犯されている写真をちらつかせながら、タカシは言う。 『愛してるよ、リョウ』  童貞野郎は本当に三擦り半で終了したため、体が楽だった。今日は晩飯の品数を増やすか、と、そんなことを考えられる程度に。  母子家庭である俺の家では、家事は俺の仕事だ。  携帯が振動し、着信を告げる。  見たことのない電話番号を不審に思いながらも、受話ボタンを押して耳に当てた。  ―――なんで、こうなるんだろう。  俺は橋の欄干に座り、足をブラブラと動かした。  もちろん下には昨日の雨の所為で水かさが増した川。    聞かされたのは、母の死。  交通事故だった。即死だった。  飛び込むのはやっぱり怖い。  死にたいと思っても、体が竦む。  ひらりと、目の前に蝶が飛んできた。    ああ、こいつについて行けばいいのか。    俺はそれを追うようにその濁流に身を投げた。  
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