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それは無言の命令。
俺は売られてる。
金のやり取りを何度か見たことがある。
断ることなんてできない。
一言でも否定する言葉を発すれば、待っているのは立ち上がれなくなるほどの暴力。
そして、俺の犯されている写真をちらつかせながら、タカシは言う。
『愛してるよ、リョウ』
童貞野郎は本当に三擦り半で終了したため、体が楽だった。今日は晩飯の品数を増やすか、と、そんなことを考えられる程度に。
母子家庭である俺の家では、家事は俺の仕事だ。
携帯が振動し、着信を告げる。
見たことのない電話番号を不審に思いながらも、受話ボタンを押して耳に当てた。
―――なんで、こうなるんだろう。
俺は橋の欄干に座り、足をブラブラと動かした。
もちろん下には昨日の雨の所為で水かさが増した川。
聞かされたのは、母の死。
交通事故だった。即死だった。
飛び込むのはやっぱり怖い。
死にたいと思っても、体が竦む。
ひらりと、目の前に蝶が飛んできた。
ああ、こいつについて行けばいいのか。
俺はそれを追うようにその濁流に身を投げた。
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