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こうしていれば、入ってきた途端に暴力を振るわれることはなかったから。
部屋に入って来た男が何か言っていたけれど、頭を掴まれて起こされるまではこのままにしておかないといけない。上げた途端に蹴りが飛んで来るから。
何かを言いながら体を揺すってくる。こんな事は今までなくて、俺は戸惑った。
また何かの遊びを思いついたのかもしれない。
そんな事を思っていると、腕を掴まれて、体を起こされた。その力の強さに身が竦んだ。次に来るだろう痛みに勝手に体が震えだし、カチカチと奥歯が鳴った。
パッと手が離れたかと思うと、その手が背中に触れ、驚きに体が跳ねた。予想していた痛みはなかった。
その手は一瞬離れたけれど、俺の背中を擦り始め、それと同時に優しく語り掛けるような声が聞こえてくる。
殴られるわけじゃない?
そろそろと上げた視線の先にある整った顔、輝くような銀色の髪と燃えるように赤い瞳、元の世界ではありえない色に息を飲んだ。
盗賊の一味には見えない風格漂う男。
その男はスーツのような服を着ていて、清潔感がありしっかりとした役職に就いていそうな人物だった。
ここはあのアジトではないのだろうか。
ひたすら何か話しかけてくるけれど、何を言っているかわからないから答えようがない。
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