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逃れられない苦しみ
目が醒めたのは、川の畔。
濁流なんかじゃなく、山の上流にあるような澄んだ水の流れる小川。
何の疑いもなく、その水を掬って飲んでしまったあとに、お腹を壊さないか心配になってしまった。
けれど、喉の渇きとその水の甘さには逆らえず、何度も口に運んだ。
まあ、そのときはそのときだ。
それにしても、
「ここどこだろう」
周りを見渡しても、建物も人もいない。
俺は川に飛び込んだ時と変わらず制服姿で、その制服は少しも汚れてはいなかった。寝転んでいたせいで草や砂程度はついていたけど。
川に飛び込んだのが夢?
それともこれが夢?
どう見ても家の周辺にはないような森。
けれど獣がいる可能性は捨てきれない。
夜になる前にどこか休めるところを探した方が良いな。
これが夢だとしても、流石にこのままここで過ごすのは気が引けた。
下流に行けば、村でもあるかもしれない。
そう思い至って、俺は川沿いを下流に歩き始めた。
ふわふわとして現実感がない。
心が麻痺してしまっているのだろう。
もしかすると、『あの世』と言われるところなのかもしれない。
そう考えると、笑いが込み上げてきて、ふっと声が出た。
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